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「給料が少ない!」外国人社員とのトラブルを防ぐには?―税金・社会保険と「手取り」を入社前に説明しよう
外国人社員を採用したあと、最初の給与支給日に、
「聞いていた給料より少ないです」
「どうしてこんなにお金が引かれているのですか?」
「年金はいりません。日本にずっと住む予定はありません」
と言われることがあります。
会社側からすると、
「税金や社会保険料が引かれるのは当然では?」
と思うかもしれません。
しかし、外国人社員の出身国によっては、日本と同じような税金や社会保障の仕組みがないこともあります。
厚生労働省の資料でも、外国人社員の場合、所得税の源泉徴収や社会保険料などについて、なぜ給与から差し引かれるのか、どの程度差し引かれるのかを理解できず、トラブルになることがあると指摘しています。
企業側に必要なのは、「日本ではそういう制度です」で終わらせず、給与と手取りの違いを具体的に説明することです。
「月給25万円」=「25万円もらえる」ではありません
たとえば求人票に、
月給25万円
と書かれていたとします。
外国人本人がこれを、
「毎月25万円が自分の銀行口座に入る」
という意味だと理解していたらどうでしょう。
実際の給与支給時には、税金や社会保険料などが差し引かれます。
本人からすると、
「約束した金額と違う」
となってしまいます。
厚生労働省の資料でも、外国人社員が「給料(収入)」と「手取り(実際に受け取るお金)」を混同している場合があるとしています。
だからこそ採用時には、
「月給は25万円です」
だけではなく、
「ここから税金や社会保険料などが引かれるため、実際に銀行口座へ振り込まれる金額は25万円より少なくなります」
と説明しておくことが大切です。
給料から何が引かれるの?
日本では、賃金は原則として全額を労働者に支払うことになっています。
ただし、所得税や住民税など、法律に基づいて労働者が負担するものについては給与から差し引くことができます。
また、一定の場合には労使協定を結んだうえで、食費や居住費などを給与から控除することができる場合もあります。厚生労働省の資料では、その場合にも実費を考慮し、不当な金額にならないよう注意することが示されています。
外国人社員に説明するときには、
「いろいろ引かれます」
だけでは十分ではありません。
給与明細を見せながら、
「これは税金です」
「これは健康保険です」
「これは年金です」
など、一つずつ説明する方が理解しやすいでしょう。
「なぜ払うのか」まで説明する
外国人社員から、
「健康なのに、なぜ健康保険料を払うのですか?」
「日本で老後を過ごさないのに、なぜ年金を払うのですか?」
と聞かれることも考えられます。
このとき、
「法律だからです」
だけで終わらせてしまうと、本人には単に「給料から取られるお金」に見えてしまいます。
厚生労働省の資料では、外国人社員に控除について説明するときには、日本に税制や社会保障制度があることだけでなく、それによって本人にどのようなメリットがあるのか、他の社員についても同様に差し引かれていることを説明することが望ましいとしています。
厚生労働省のやさしい日本語による説明例では、社会保障制度を、
病気のときや仕事がないときなど、困ったときにみんなで助け合うための国のルール
という考え方で説明しています。
これは外国人社員への説明として、とても分かりやすいと思います。
年金は「老後のためだけ」ではありません
外国人社員に特に理解されにくいものの一つが年金かもしれません。
「数年働いたら母国へ帰るので、年金は必要ありません」
と思う人もいるでしょう。
しかし、厚生労働省の資料では、公的年金が備えているリスクは老後だけではなく、一定の障害や死亡によって本人や家族の生活が困難になるリスクにも備える制度であることを説明しています。
つまり、
「年を取ったときにもらうお金」
とだけ説明すると、制度の一部分しか伝わりません。
短期間日本で働く外国人社員にも、なぜ加入する制度なのかを説明しておくことが大切です。
帰国する外国人には「脱退一時金」という制度も
厚生年金保険に加入していた外国人が日本を出国する場合には、一定の要件を満たすと「脱退一時金」を請求できる場合があります。
今回の厚生労働省資料でも、この制度について詳しく触れています。
ただし、
「帰国すれば年金が全部戻ってくる」
という制度ではありません。
また、脱退一時金を請求した場合には、その請求以前の期間が年金加入期間ではなくなるため、将来日本の老齢年金を受け取る可能性なども考えたうえで、慎重に検討する必要があると資料は説明しています。
企業側が外国人社員の退職時に、
「こういう制度があります」
と情報提供できれば、とても親切でしょう。
雇用保険も「引かれるだけのお金」ではありません
給与明細には雇用保険料も出てきます。
これについても、本人が制度を知らなければ、
「また何か引かれている」
としか見えません。
厚生労働省の資料では、雇用保険について、会社を辞めて次の仕事を探している間の生活を支える「基本手当」の仕組みがあることを説明しています。
もちろん、退職すれば誰でも自動的にもらえるわけではなく、要件や手続があります。
しかし、
「雇用保険料を払っています」
だけではなく、
「失業した場合などに備える制度です」
と説明するだけでも、受け止め方はかなり変わるでしょう。
会社が税金を「取っている」のではありません
もう一つ、外国人社員への説明で気をつけたいことがあります。
給与から税金が差し引かれているのを見て、
「会社が自分の給料を取っている」
と誤解されないようにすることです。
厚生労働省のやさしい日本語による説明例では、会社が給与から税金分を差し引き、本人に代わって国や市区町村へ支払うという形で説明しています。
これはシンプルですが重要です。
「会社のお金になるわけではありません」
「あなたに代わって会社が納めています」
という一言を加えるだけでも理解しやすくなります。
「なぜ住所を会社に教えるの?」にも理由を説明する
入社時には住所など、さまざまな情報を会社へ提出してもらいます。
日本人社員なら特に疑問を持たないかもしれません。
しかし外国人社員からすると、
「どうして会社に住所を教えなければならないの?」
と思うこともあります。
厚生労働省の資料では、会社が本人に代わって税金や保険の計算・手続きを行うために必要な情報であることを説明する例が示されています。
単に、
「会社の決まりなので提出してください」
ではなく、
「何のために必要なのか」
まで伝える。
この考え方は、外国人雇用全般でとても大切です。
退職するときにも社会保険の説明を
社会保険についての説明は、入社時だけではありません。
会社を退職して次の会社に入るまで期間が空く場合には、会社の健康保険や厚生年金から外れるため、国民健康保険や国民年金などの手続が必要になる場合があります。
厚生労働省の資料でも、外国人社員が手続方法を知らず困っている場合には、どこで手続をするのかを伝えたり、サポートしたりすることが望ましいとしています。
外国人社員にとって、
「会社を辞めたら保険も終わり」
という理解で止まってしまうと、その後の手続で困る可能性があります。
退職時の案内まで含めて考えることが大切です。
給与明細を「一緒に見る」ことから始めてもよい
外国人社員に、日本の税制や社会保障制度を最初から完璧に理解してもらう必要はないと思います。
制度をすべて説明しようとすると、かえって難しくなってしまいます。
最初の給与支給日に給与明細を一緒に見ながら、
「ここが基本給です」
「ここが残業代です」
「ここから税金が引かれています」
「ここが健康保険です」
「ここが年金です」
「最後のこの金額が、銀行口座に振り込まれる金額です」
と確認するだけでもよいでしょう。
厚生労働省も、外国人社員に控除を説明する際には、具体的な控除額や手取り額を示すなど、具体的な金額で説明することを勧めています。
「知らない」のではなく、「知らされていない」こともあります
外国人社員が、
「年金を払いたくありません」
「どうして税金を取られるのですか?」
と言ったとき、
「日本の制度を理解していない」
と考えてしまうかもしれません。
しかし、そもそも日本人は学校や家庭、これまでの就労経験などを通して、日本の税金や社会保険について少しずつ知識を得ています。
外国人社員には、その前提となる知識がない場合があります。
厚生労働省の資料でも、出身国と雇用慣行や社会制度が異なるため、給与から税金などが控除される理由を理解できないことがあるとしています。
だからこそ、
「日本では常識だから分かるでしょう」ではなく、「初めて日本で働く人にも分かるように説明する」。
それが大切なのではないでしょうか。
外国人社員に分かりやすい給与明細や説明は、日本人の新入社員にとっても分かりやすいものです。
外国人雇用をきっかけに、会社の給与・税金・社会保険についての説明方法を見直してみることも、働きやすい職場づくりにつながります。
参考資料
厚生労働省
「外国人社員と働く職場の労務管理に使える ポイント・例文集
~日本人社員、外国人社員ともに働きやすい職場をつくるために~」

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