外国人社員に残業をどう説明する?―残業・休日出勤・割増賃金をめぐる行き違いを防ぐために

外国人社員を採用している企業では、

「もっと働きたいと言われた」

「残業したのに給料が思ったより少ないと言われた」

「休日出勤をお願いしたら、話が違うと言われた」

といった行き違いが起こることがあります。

しかし、残業や休日出勤についてのルールは国によって異なることがあります。

日本では法律によって労働時間や休日についてのルールが定められており、会社が自由に何時間でも働いてもらえるわけではありません。

厚生労働省の「外国人社員と働く職場の労務管理に使えるポイント・例文集」でも、労働時間についての考え方は人によってさまざまであり、残業を希望する外国人もいれば、希望しない外国人もいるため、法定労働時間と時間外労働の仕組みをきちんと説明することが大切だとしています。

「本人が働きたい」と言っても、自由に残業できるわけではありません

外国人社員から、

「もっと働きたいです」

「残業して給料を増やしたいです」

と言われることがあります。

本人が希望しているのだから問題ないと思うかもしれません。

しかし、残業は本人の希望だけで自由にできるものではありません。

厚生労働省の資料では、法定労働時間を超えて働いたり法定休日に働いたりする場合、会社と労働者の代表との間であらかじめ36協定(サブロク協定)を締結する必要があることを説明しています。

外国人社員に対しても、

「働きたいだけ働くことができるわけではありません」

「会社にも守らなければならない労働時間のルールがあります」

ということを伝えておく必要があります。

厚生労働省のやさしい日本語による説明例でも、法律で決められた時間を超えて働いたり、休みの日に仕事をしたりするためには、会社と労働者代表との「約束」が必要であり、それを36協定という、と説明しています。

専門用語だけを伝えるのではなく、「なぜこの制度があるのか」まで説明することが理解につながります。

残業代と割増賃金は同じではありません

企業側でも意外と混同しやすいのが、

「残業代」

「割増賃金」

です。

厚生労働省の資料では、この違いについても説明しています。

残業代とは、会社で決めた所定労働時間を超えて働いた場合に支払われる賃金を指します。

一方、割増賃金とは、時間外労働・休日労働・深夜労働などについて、通常の賃金に一定割合を加えて支払うものです。

たとえば、会社の勤務時間が、

9時~17時
休憩1時間

であれば、1日の所定労働時間は7時間です。

17時から18時まで働いた場合、会社の所定労働時間は超えていますので残業になります。

しかし、資料では、この時間については法定労働時間の範囲内であるため、必ずしも割増賃金にする必要があるとは限らないと説明されています。

一方、18時を超えて働けば法定労働時間を超えるため、割増賃金が必要になります。

この違いは日本人でも分かりにくいものです。

外国人社員に、

「残業したのに、どうして全部25%増しではないの?」

と言われる可能性もあります。

そのため、

「会社の勤務時間」と「法律上の労働時間」は必ずしも同じではない

ということを説明しておくとよいでしょう。

休日に働けば、すべて休日割増になるとは限りません

休日出勤についても注意が必要です。

「休みの日に働いたら、必ず休日割増になる」

と考えている人もいるかもしれません。

しかし、会社が定めている休日と、法律上の「法定休日」とは必ずしも同じではありません。

今回の厚労省資料では、法定休日に働く場合を含め、時間外労働・休日労働について36協定が必要であることを説明しています。

企業側は、

「会社の休日はいつなのか」

「法定休日はどの日なのか」

「休日に働いた場合、給与はどのように計算されるのか」

など、自社のルールを整理して伝えることが重要です。

固定残業代は特に丁寧な説明が必要です

外国人雇用で特に注意したいのが、固定残業代です。

求人票などに、

「月給30万円(固定残業代20時間分を含む)」

と書かれていても、その意味が外国人本人に十分理解されているとは限りません。

厚生労働省の資料でも、みなし残業、いわゆる固定残業代制度は外国人にとって理解しにくい場合があるため、丁寧に説明する必要があるとしています。

特に大切なのは、

「固定残業代を払っているから、何時間残業しても追加の残業代は出ない」

という制度ではないという点です。

資料では、あらかじめ設定された時間を超えて残業した場合には、その超えた時間分の残業代をさらに支払う必要があると説明しています。

採用時には、

「基本給はいくらなのか」

「固定残業代はいくらなのか」

「何時間分なのか」

「その時間を超えたらどうなるのか」

まで分けて説明した方がよいでしょう。

「もっと稼ぎたいから残業したい」という希望にも説明が必要です

外国人社員の中には、

「日本にいる間にできるだけお金を貯めたい」

「家族へ仕送りしたい」

などの理由から、できるだけ長く働きたいと希望する人もいます。

その気持ち自体に問題があるわけではありません。

しかし会社としては、

「本人が希望しているから」

という理由だけで長時間労働を認めることはできません。

厚生労働省の資料でも、時間外労働には上限が設けられており、長時間労働を防ぐことが制度の目的の一つとして示されています。

外国人社員には、

「会社が残業を断っているのではなく、働く人の健康を守るために法律でルールが決まっています」

という説明をすると理解しやすくなります。

残業は「勝手にしてよい仕事」でもありません

反対に、

「自分で残って仕事をすれば、その分残業代がもらえる」

と思ってしまうケースも考えられます。

厚生労働省のやさしい日本語の説明例では、会社から残業の指示がない場合に、本人が「もっとお金が欲しい」という理由で自分の判断だけで長く働くことはできない、と説明しています。

そのため会社では、

「残業するときは上司の許可が必要です」

「事前申請が必要です」

など、自社の残業ルールを具体的に伝えておくことが大切です。

ただし、形式上「残業禁止」としていても、会社が実際には残業を指示・黙認しているような場合まで、単純に「本人が勝手に残った」と処理できるわけではありません。

会社側も、実際の働き方とルールが一致しているか確認する必要があります。

外国人社員だから特別な残業ルールになるわけではありません

外国人社員を雇用するときに最も大切なのは、

外国人だから別の労働ルールが適用されるわけではない

ということです。

日本で雇用されて働く以上、労働時間や残業、休日などについて日本の労働関係法令が適用されます。

その一方で、本人が日本の制度を最初から知っているとは限りません。

だからこそ企業には、

「法律だから守ってください」

だけではなく、

「なぜその制度があるのか」

「会社ではどういうルールになっているのか」

まで説明することが求められます。

「説明した」ではなく、「同じ理解になっているか」

外国人雇用では、

「雇用契約書に書いてあります」

「入社時に説明しました」

だけで終わってしまうことがあります。

しかし、

「残業があります」

という一言だけでも、

会社側と外国人社員側でイメージしている内容が違うかもしれません。

残業はどのくらいあるのか。

誰が指示するのか。

自分の判断で残ってよいのか。

残業代はいくらなのか。

休日出勤はあるのか。

それぞれを具体的に説明することで、入社後の行き違いはかなり減らすことができます。

外国人社員にルールを分かりやすく説明することは、特別扱いではありません。

むしろ、会社自身が、

「自社の労働時間や残業のルールを、社員にきちんと説明できる状態になっているか」

を確認する機会にもなります。

外国人社員にも日本人社員にも分かりやすいルールを整えることが、長く安心して働ける職場につながっていくのではないでしょうか。

参考資料

厚生労働省
「外国人社員と働く職場の労務管理に使える ポイント・例文集
~日本人社員、外国人社員ともに働きやすい職場をつくるために~」

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