外国人社員を解雇するとき、日本人と違うルールになる?―「外国人だから」は解雇の理由になりません

外国人社員を雇用している企業では、

「仕事が思うようにできない」

「会社のルールを守ってくれない」

「日本語でのコミュニケーションが難しい」

など、採用後に問題が生じることがあります。

そのようなとき、

「外国人だから辞めてもらうことはできるのか」

「在留資格のある外国人なら、契約を終了しやすいのか」

と考える企業担当者もいるかもしれません。

しかし、基本的な考え方は明確です。

外国人社員も、日本人社員と同じです。

厚生労働省の資料でも、国籍を理由として解雇することは認められないと明記されています。

外国人を雇用するということは、日本で働く一人の労働者を雇用するということです。

「外国人だから」は理由になりません

たとえば、

「外国人社員とのコミュニケーションが難しい」

「日本人社員とうまく馴染めない」

「やはり日本人を採用したい」

という理由だけで解雇することは適切ではありません。

厚生労働省の資料では、解雇について、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には、権利を濫用したものとして無効になるという労働契約法第16条の考え方を紹介しています。

そして何より、国籍そのものを理由とすることはできません。

これは、

「外国人だから特別に守られている」

という意味ではありません。

日本人でも外国人でも、解雇にはルールがある。

ということです。

日本と外国では「解雇」の感覚が違うことがあります

今回の厚生労働省資料で興味深いのは、外国人社員の中には、

「突然解雇されるのではないか」

という不安を持ちながら働いている人もいる、と指摘していることです。

資料では、外国では、その人の能力がポジションに見合っていないと判断された場合など、日本とは異なる観点で解雇となることがあり、即日解雇が一般的な国もあると説明しています。

つまり会社側が、

「普通に働いていれば突然解雇なんてしないよ」

と思っていても、外国人社員にはその「普通」が分かりません。

そのため、解雇についても、

「こういう場合には問題になります」

「会社のルールを守って働いていれば、理由なく突然辞めてもらうことはありません」

と説明しておくことが、安心して働いてもらうことにつながります。

どんな場合に解雇が問題になるのか

厚生労働省の資料では、解雇について大きく、

整理解雇・懲戒解雇・普通解雇

の3つを紹介しています。

たとえば、会社の経営上、人員削減が必要となる場合。

重大な会社のルール違反があった場合。

病気やけがによって仕事を続けることができなくなった場合。

能力不足や成績不良、頻繁な遅刻・欠勤、業務命令違反などが問題となる場合。

ただし、これらに当てはまりそうだからといって、直ちに解雇が有効になるという意味ではありません。

個々の事情によって判断は異なります。

大切なのは、

「外国人だから辞めてもらう」のではなく、その社員について何が問題となっているのかを具体的に考えること

です。

「日本語ができないから解雇」は慎重に

外国人雇用では、特に注意したい問題があります。

それが日本語能力です。

たとえば採用後に、

「電話対応ができない」

「指示が理解できない」

「日本語で書類を作成できない」

といった問題が分かったとします。

しかし、そのときに、

「やっぱり外国人は難しい」

としてしまうのは問題の整理として適切ではありません。

まず確認したいのは、

採用時に、その仕事に必要な日本語能力をどこまで具体的に伝えていたか

ということです。

「日本語が話せる方」

という募集条件だけでは、

日常会話なのか、

電話対応まで必要なのか、

顧客との交渉が必要なのか、

日本語の報告書を作成する必要があるのか、

本人には分かりません。

そしてもう一つ、

本当に日本語能力の問題なのか

も確認する必要があります。

業務そのものをまだ教えていない。

専門用語を説明していない。

指示が曖昧だった。

会社独自のルールを本人が知らなかった。

という可能性もあります。

外国人社員の問題なのか、会社側の説明不足なのか。

そこを切り分けることが大切です。

「何となく合わない」を具体的にする

外国人社員との間で問題が起こったとき、

「うちの会社には合わない」

「日本の会社に向いていない」

という言葉が出てくることがあります。

しかし、それでは何が問題なのか分かりません。

遅刻が何回あったのか。

業務上どのようなミスがあったのか。

会社は何を指導したのか。

本人に改善する機会を与えたのか。

指導内容を本人が理解できていたのか。

こうして具体的に考えていくと、

「外国人だから」

という問題ではなく、

一人の社員の勤務上の問題

として整理できるようになります。

外国人社員についても、日本人社員と同じように、感覚ではなく事実をもとに対応することが大切です。

解雇理由を本人に説明することが重要です

厚生労働省の資料では、外国人社員を解雇する場合には、なぜ解雇されたのか分からないままではトラブルにつながるため、理由をきちんと説明する必要があるとしています。

これはとても重要です。

会社側では、

「何度も注意したから分かっているはず」

と思っていても、本人には伝わっていない可能性があります。

特に、日本語を母語としない社員に、

「もう少しちゃんとして」

「普通はこうするでしょう」

「周りを見て行動してください」

という曖昧な注意を繰り返しても、何を改善すればよいのか理解できないことがあります。

できるだけ、

「何が問題なのか」

「会社はどうしてほしいのか」

を具体的に伝えることが必要です。

就業規則を「見せただけ」で終わらせない

厚生労働省の資料では、どのような場合に解雇となるのかについて、就業規則に具体的な事例を記載し、事前に説明しておく必要があるとしています。

ここでも、このシリーズで繰り返し出てくる問題があります。

「就業規則に書いてあります」

だけで、本当に伝わっているでしょうか。

外国人社員にとって、日本語で書かれた就業規則を読むこと自体が難しい場合があります。

また、日本人社員であっても、就業規則を隅々まで理解している人は多くないでしょう。

重要なルールについては、

書いてあるから終わりではなく、説明する。

これが大切です。

「解雇」と「雇止め」は同じではありません

もう一つ、企業側にも知っておいてほしいのが、

解雇と雇止めの違い

です。

解雇は、会社が一方的に労働契約を終了させることです。

一方、雇止めは、期間の定めがある労働契約について、契約期間が満了したときに更新せず終了することです。

厚生労働省の資料でも、この2つは別のものとして整理されています。

「契約社員だから、契約期間が終われば必ず自由に終了できる」

とも限りません。

契約が繰り返し更新されていた場合や、本人が契約更新を期待することに合理的な理由がある場合などには、雇止めが認められないことがあります。

さらに、有期労働契約の契約期間途中の解雇については、資料では「やむを得ない事由」がなければできないと説明されています。

外国人社員でも日本人社員でも同じです。

退職後の手続についても伝える

外国人社員の場合、雇用が終了したあとにも、日本で生活を続けるために必要となる手続があります。

今回の資料では、外国人社員の中には、退職後に必要な雇用保険などの手続を知らない人もおり、必要な届出をしなければ、雇用保険の給付や在留資格の更新などで不利益を受ける場合があるとしています。

そのため、退職する外国人社員には、退職後に必要となる手続についても伝えることが望ましいとしています。

雇用関係が終わるから、

「ここから先は本人の問題」

と完全に切り離すのではなく、必要な情報を案内して送り出す。

そうした対応も、外国人を雇用する企業として大切ではないでしょうか。

在留資格の問題と労働問題は分けて考える

外国人社員の場合には、さらに「在留資格」があります。

ここは行政書士の立場からも、とても重要な部分です。

外国人社員の仕事内容を変更するとき。

配置転換するとき。

転職するとき。

退職するとき。

こうした場面では、在留資格との関係を確認する必要が出てくることがあります。

ただし、

在留資格の問題と、会社がその人を解雇できるかという労働法上の問題は、同じものではありません。

外国人社員だからこそ、

「労務」と「在留資格」

を分けて考え、必要に応じてそれぞれの専門家へ確認することが大切です。

外国人だからではなく、「一人の社員」として考える

外国人社員との間に問題が起こったとき、

「外国人だから」

という言葉を一度外して考えてみると、問題が整理しやすくなることがあります。

「外国人だから時間を守らない」

ではなく、

「この社員に遅刻が続いている」。

「外国人だから日本語ができない」

ではなく、

「この仕事に必要な日本語能力と、現在の能力に差がある」。

「外国人だから会社に馴染めない」

ではなく、

「どのような場面でコミュニケーションに問題が生じているのか」。

こうして考えると、会社が取るべき対応も具体的になります。

厚生労働省の資料にも、

「外国人の方も、日本人の方と同様に不当な雇止めや解雇はしてはいけません」

と明確に示されています。

外国人社員を特別扱いする必要はありません。

そして、不利に扱うこともいけません。

日本人でも外国人でも、同じ職場で働く一人の社員として、同じルールのもとで向き合う。

それが外国人雇用の基本ではないでしょうか。

参考資料

厚生労働省
「外国人社員と働く職場の労務管理に使える ポイント・例文集
~日本人社員、外国人社員ともに働きやすい職場をつくるために~」

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