「8時始業」は8時に来ればいい?―外国人雇用で起こる「時間」のすれ違い

外国人社員を雇用している会社では、

「始業時間ぎりぎりに出社してくる」

「9時始業なのに、9時に会社へ到着する」

といったことに戸惑うことがあります。

日本人社員から見ると、

「もう少し早く来るのが普通では?」

と思うかもしれません。

しかし、厚生労働省の資料では、こうした場面について、単純に「時間にルーズ」と考えるのではなく、国や文化によって働き始める時間についての感覚が異なる場合があることに気づくことが大切だとしています。

たとえば、9時始業であれば「9時に会社に到着すればよい」と理解する人もいると紹介されています。

外国人社員との時間に関する行き違いを防ぐためには、「始業時間は9時です」と伝えるだけではなく、会社が考える「9時始業」とはどういう状態なのかまで説明することが大切です。

「9時始業」と「9時出社」は同じではありません

たとえば会社が、

「勤務時間は9時から18時です」

と説明したとします。

会社側では、

「9時には自分の持ち場にいて、仕事を始められる状態になっている」

という意味で使っているかもしれません。

一方、外国人社員は、

「9時までに会社に到着すればよい」

と理解しているかもしれません。

厚生労働省の資料でも、外国人社員への説明例として、

始業時間とは「会社に着く時間」ではなく、「いつもの仕事をする場所で仕事を始める時間」

と具体的に説明しています。

つまり、

「9時始業です」

だけではなく、

「9時には仕事を始められる状態にしてください」

と伝えた方が、会社の意図がはっきりします。

ただし「早く来て準備してください」には注意が必要です

ここで企業側にも注意したい点があります。

「うちの会社ではみんな10分前に来ています」

「制服に着替えて、道具を準備してから始業してください」

という職場もあるでしょう。

しかし、厚生労働省の資料では、労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、会社の指示によって始業前に仕事の準備をした場合、その時間が労働時間と評価されることがあるとしています。

たとえば、

「8時始業だから、7時50分には必ず来て準備してください」

と会社が義務づけ、その準備が仕事として必要なものであれば、

「その10分はどう扱うのか」

という問題も考えなければなりません。

外国人社員に時間を守ってもらうことは大切ですが、同時に、会社側も始業前の準備時間を当然の無給時間として扱っていないか確認する必要があります。

日本の「5分前行動」は世界共通ではありません

日本では、

「約束の5分前には到着する」

「始業時間より少し早く出社する」

といった行動を自然だと考える人も少なくありません。

厚生労働省の資料でも、日本では始業時間ちょうどに業務を開始できるよう、自発的に早めに出勤する人が多い職場があることや、学校などで「5分前行動」と教えられるなど、遅刻に厳しい文化的背景があることを指摘しています。

しかし、それは必ずしも世界共通の感覚ではありません。

外国人社員からすると、

「9時から給料が発生するなら9時に行けばいい」

と考えることもあります。

だからこそ、

「普通は分かるでしょう」

ではなく、

会社のルールを言葉にして伝えること

が重要になります。

遅刻するときの連絡方法も決めておく

時間に関するトラブルは、始業時間だけではありません。

電車の遅延や体調不良などで遅刻することもあります。

その際、

「遅れるときは必ず連絡してください」

だけではなく、

「誰に」

「何時までに」

「電話・LINE・社内システムなど、どの方法で」

連絡するのかを具体的に決めておくと分かりやすくなります。

厚生労働省の資料でも、時間に遅れる場合には前もって連絡が必要であることなど、会社側が「当然」と考えていることも明確に説明することが望ましいとしています。

「終業時間」の感覚にもすれ違いがあります

実は、この資料でもう一つ興味深い指摘があります。

日本の職場には、始業時間には厳しい一方で、

「周囲がまだ働いているから帰りにくい」

など、終業時間については曖昧になっている職場もあるという点です。

外国人社員が18時の終業と同時に帰宅すると、

「みんなまだ働いているのに……」

と感じる日本人社員がいるかもしれません。

しかし、業務上残る必要がないのであれば、終業時間になって帰ること自体を問題にするべきではありません。

逆に業務上の必要があって残業してもらうのであれば、その理由や時間外労働の取扱いをきちんと説明する必要があります。

厚生労働省の資料も、終業後に仕事がないのに「周囲が残っているから自分も残る」という習慣がある場合には、外国人社員だけではなく、日本人社員も含めて働き方や職場のルールを見直すことが大切だとしています。

これは、とても大切な視点だと思います。

外国人社員を採用することが、職場のルールを見直すきっかけになる

外国人社員との間で、

「9時始業の意味が伝わっていなかった」

という出来事が起きたとします。

それを、

「外国人だから時間を守らない」

と片付けてしまえば、それで終わりです。

しかし、

「そもそも私たちの会社では、始業時間をどう定義しているのだろう」

「準備時間は労働時間として適切に扱われているだろうか」

「終業後、意味もなく会社に残る習慣はないだろうか」

と考えてみると、会社全体の働き方を見直すきっかけになります。

外国人社員に分かりやすいルールは、日本人社員にとっても分かりやすいルールです。

外国人を雇用するときに大切なのは、相手に日本の「常識」を一方的に覚えてもらうことではありません。

「私たちの会社では、こういうルールで働いています」と具体的に説明し、お互いに同じ理解を持つこと。

そこから、働きやすい職場づくりが始まるのではないでしょうか。

参考資料

厚生労働省
「外国人社員と働く職場の労務管理に使える ポイント・例文集
~日本人社員、外国人社員ともに働きやすい職場をつくるために~」

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