「試用期間だから辞めてもらえる」は正しい?―外国人社員を採用する企業が知っておきたい試用期間の考え方

外国人社員を採用するとき、

「まず3か月は試用期間にしよう」

「仕事ができるか分からないので、半年間様子を見よう」

という企業は少なくありません。

試用期間そのものは珍しい制度ではありません。

しかし、ここで注意したいのが、

「試用期間中なら、会社が自由に辞めてもらうことができる」

という理解です。

厚生労働省の資料では、日本の試用期間について、長期雇用を前提として、新しく採用した社員の適性や能力を評価する期間と考えられることが多いと説明しています。そして、試用期間であっても労働契約を結んでいる状態と解釈されることが多く、正当な理由なく解雇することはできないとしています。

これは外国人社員だけの話ではありません。

日本人社員でも同じです。

試用期間中も「会社の社員」です

「試用」という言葉から、

「まだ正式には採用していない」

というイメージを持つことがあります。

しかし、厚生労働省の外国人向けの説明例を見ると、とても分かりやすく書かれています。

試用期間について仕事ぶりなどを確認する期間であると説明したうえで、

「チェックする〇か月間も、あなたは会社の社員です」

と説明しています。

これは企業側にも覚えておいてほしい言葉です。

試用期間とは、

「雇うかどうかを決める前のお試し期間」

ではありません。

すでに採用し、労働契約が始まったうえで、その人の適性などを確認する期間として考える必要があります。

「思っていた人と違った」だけでは簡単ではありません

実際に採用してみると、

「期待していたほど仕事ができない」

「会社に合わない気がする」

「コミュニケーションがうまくいかない」

ということはあり得ます。

外国人社員の場合には、そこに日本語能力や文化・習慣の違いが加わることもあるでしょう。

しかし、

「試用期間だから」

という一言だけで、自由に解雇できるわけではありません。

今回の資料では、労働契約法第16条を示し、解雇について、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には、権利を濫用したものとして無効になることを紹介しています。

つまり企業側には、

「なぜ本採用が難しいと判断したのか」

という説明ができるだけの理由が必要になります。

そもそも試用期間で「何を見るのか」

ここは、とても重要だと思います。

会社が、

「試用期間3か月」

とだけ決めていても、

その3か月で何を確認するのかが曖昧

では、本人も何を求められているのか分かりません。

厚生労働省の資料では、日本の試用期間は、新しく採用した社員の適性や能力を評価する期間と説明しています。

たとえば、

仕事に必要な基本的な能力があるか。

会社のルールを守れるか。

指示された業務に取り組めるか。

勤務状況に問題がないか。

など、会社として確認したいことを整理しておくことが大切でしょう。

そして、それを本人にも説明しておく。

「3か月間様子を見ます」

だけではなく、

「この3か月間では、このようなことを確認します」

と伝えた方が、外国人社員にとっても働きやすくなります。

外国では「試用期間」の意味が違うことも

今回の厚生労働省資料で興味深いのが、試用期間に対する考え方は、日本と外国で異なる場合があると指摘していることです。

資料では、日本では仕事に関する基本的な素養などを判断するものと考えられることが多い一方、外国では、実際の業務をこなすためのスキルを評価される期間として考えられる場合があると説明しています。

つまり外国人社員の側が、

「試用期間=会社からテストされている期間」

という強い意識を持っている可能性もあります。

そのため、

「何ができなければクビになるのだろう」

と不安を感じながら働いているかもしれません。

日本での試用期間がどのようなものなのかを最初に説明することは、本人の不安を減らすことにもつながります。

試用期間中の給料も明確に

試用期間中については、給与の説明も重要です。

会社によっては、

「試用期間中は月給〇万円」

「本採用後は月給〇万円」

というように労働条件が異なることがあります。

厚生労働省の資料でも、外国人社員には、日本での試用期間がどのようなものかだけでなく、試用期間中の賃金などについても説明することを勧めています。

「試用期間中は給料が違うなんて知らなかった」

ということにならないよう、採用時に具体的に説明しておく必要があります。

外国人社員の場合には、

「基本給」

「手当」

「固定残業代」

など、日本の給与制度そのものが分かりにくいこともあります。

ですから、

「試用期間中はいくら」

「本採用後はいくら」

「何が変わるのか」

まで明確に伝えた方がよいでしょう。

「日本語が思ったよりできなかった」という問題

外国人採用では、こうしたケースも考えられます。

面接では日本語で問題なく話せた。

しかし入社してみると、

専門用語が分からない。

電話対応が難しい。

上司からの指示を十分理解できない。

そこで、

「日本語ができないから試用期間で辞めてもらおう」

となってしまうケースです。

しかし、その前に企業側にも確認してほしいことがあります。

採用するときに、どの程度の日本語能力が必要なのかを具体的に伝えていたでしょうか。

「日本語ができる人」

というだけでは曖昧です。

日常会話ができればよいのか。

電話対応が必要なのか。

日本語で報告書を書く必要があるのか。

顧客対応を一人で任せるのか。

仕事によって必要な日本語能力は全く違います。

試用期間になってから初めて高い日本語能力を求めるのではなく、採用前から仕事に必要な能力を具体的に伝えておくことが、企業と外国人双方にとって大切です。

できないことがあれば、まず教えるという視点も

新しく入社した人が、最初から会社の仕事をすべて理解していることはありません。

これは外国人でも日本人でも同じです。

特に外国人社員の場合、

「仕事ができない」

ように見えても、実際には、

日本語の指示が理解できていない。

会社独自のルールを知らない。

日本の職場で当たり前とされている習慣を知らない。

ということもあります。

「なぜできないのか」

を確認せず、

「能力がない」

と判断してしまうのは早いかもしれません。

分かりやすく説明する。

一度実際にやって見せる。

質問できる人を決めておく。

こうした工夫で改善することもあります。

問題があれば、記録して説明する

試用期間中に勤務上の問題があった場合、

「何となく合わない」

だけで終わらせるのではなく、

いつ、

何があり、

会社がどのように指導し、

本人がどう対応したのか、

という経過を確認しておくことも大切です。

厚生労働省の資料では、試用期間中であっても正当な理由なく解雇することはできないとしたうえで、就業不能、成績不良、出勤不良、業務命令違反などを理由の例として挙げています。

だからこそ企業としても、

「何が問題だったのか」

「本人に何を伝えたのか」

を曖昧にしないことが重要です。

これは外国人雇用に限った話ではありません。

日本人社員の採用でも同じでしょう。

試用期間は「辞めさせるための期間」ではありません

試用期間というと、企業側から社員を評価する期間というイメージが強くなります。

しかし、新しく入社した社員の側も、

「この会社で長く働けるだろうか」

「困ったときに相談できるだろうか」

「きちんと仕事を教えてもらえるだろうか」

と会社を見ています。

外国人社員なら、そこに、

「外国人でも公平に扱ってもらえるだろうか」

という不安もあるかもしれません。

試用期間は、

会社が社員を一方的に選別するための期間ではなく、お互いがこれから一緒に働いていけるかを確認していく大切な時期

と考えた方がよいのではないでしょうか。

外国人にも日本人にも、分かりやすい採用を

厚生労働省の資料では、外国人社員が日本の試用期間について文化や雇用慣行の違いからギャップを感じることがあるため、試用期間の意味や賃金などを説明することが望ましいとしています。

しかし、この記事を書いていると気づきます。

これは外国人だけに必要な説明でしょうか。

日本人の新入社員にも、

「試用期間は何か月なのか」

「その間、何を確認されるのか」

「給与は変わるのか」

「本採用後に何が変わるのか」

をきちんと説明した方がよいはずです。

外国人社員に分かりやすい会社は、日本人社員にとっても分かりやすい会社です。

外国人雇用をきっかけに、これまで「言わなくても分かる」としてきた会社のルールを、もう一度言葉にしてみる。

それが、外国人にも日本人にも安心して働いてもらえる職場づくりにつながるのではないでしょうか。

参考資料

厚生労働省
「外国人社員と働く職場の労務管理に使える ポイント・例文集
~日本人社員、外国人社員ともに働きやすい職場をつくるために~」

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