- 日本語
- 한국어
「そんなつもりじゃなかった」では済まないことも―外国人社員と働く職場で考えたいハラスメント
外国人社員と一緒に働いていると、
「日本では普通のことだと思っていた」
「親しみを込めて言っただけ」
「本人のために注意したつもりだった」
という言葉が出てくることがあります。
一方、外国人社員の側も、
「自分の国では普通です」
「冗談のつもりでした」
「悪いことだとは思いませんでした」
ということがあるかもしれません。
外国人社員と働く職場では、言葉だけでなく、文化や習慣、人との距離感、上下関係に対する考え方なども異なります。
だからこそ気をつけたいのが、職場でのハラスメントです。
厚生労働省の資料では、文化の違いから、外国人社員にアドバイスをしただけのつもりでも相手を嫌な気持ちにさせてしまうことがあるため、注意して接する必要があるとしています。
同時に、外国人社員自身がハラスメントの加害者にならないためにも、何をしてはいけないのかを具体的に伝えておくことが大切だとしています。
つまり、
外国人社員をハラスメントから守ること。
そして、
外国人社員にも日本の職場でしてはいけないことを伝えること。
その両方が必要です。
「日本の職場では普通だから」は通用する?
たとえば外国人社員が仕事を間違えたとき、
「何回言ったら分かるの?」
「こんなこともできないの?」
と強い言葉で注意したとします。
上司としては、
「仕事だから厳しく指導しただけ」
という認識かもしれません。
もちろん、業務上必要な指導をすること自体が直ちにパワーハラスメントになるわけではありません。
今回の厚生労働省資料では、パワーハラスメントについて、職場で上の立場にある人が、その立場を利用して、仕事上必要な範囲を超えた強い言い方や行為によって相手の心身に苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりするものとして説明しています。
大切なのは、
「指導したかどうか」だけではなく、「どのように指導したか」
ということです。
外国人社員だから厳しく指導してはいけないということではありません。
仕事上必要なことは、当然伝えなければなりません。
ただし、
人格を否定する。
必要以上に怒鳴る。
長時間叱責する。
仕事から意図的に外す。
必要なことを教えない。
といった行為は、単なる「指導」とは別の問題になります。
パワハラは「怒鳴る」だけではありません
パワーハラスメントというと、
「上司が部下を怒鳴る」
という場面を想像しがちです。
しかし、厚生労働省の外国人社員向け説明例を見ると、それだけではありません。
人を殴ったり蹴ったりする身体的な攻撃のほか、
無視して人間関係から切り離すこと、
仕事に必要なことを教えず、到底できない仕事をさせて失敗を厳しく責めること、
能力があるにもかかわらず、嫌な気持ちにさせるためにほとんど仕事を与えないこと、
本人が知られたくない個人情報を他の人へ話すこと、
なども例として挙げられています。
これは外国人雇用に限った話ではありません。
日本人社員にもそのまま当てはまります。
「外国人だから分からないだろう」と仕事を教えない
外国人社員については、特に注意したいことがあります。
「日本語があまりできないから」
「説明しても分からないから」
「外国人には難しい仕事だから」
という理由で、必要な教育を十分に行わないことです。
もちろん、その人の能力や経験に応じて仕事内容を決めることは必要です。
しかし、
国籍だけを理由に、その人が成長する機会まで奪っていないか
は考えてみてもよいでしょう。
厚生労働省の資料では、仕事に必要なことを教えず、その人には到底できない仕事をさせ、できなかったことを厳しく叱る行為をパワーハラスメントの例として挙げています。
「できない」
と判断する前に、
「きちんと教えたか」
という会社側の確認も必要です。
外国人社員も「加害者」になることがあります
ここが今回の記事で特に大切なところです。
外国人社員についてハラスメントを考えると、
「外国人社員を守らなければ」
という話になりがちです。
もちろん、それは重要です。
しかし厚生労働省の資料は、もう一歩踏み込んでいます。
外国人社員自身がパワーハラスメントの加害者にならないためにも、どのような行為をしてはいけないのかを具体的に伝える必要があるとしています。
外国人社員が将来、後輩を指導する立場になることもあります。
管理職になることもあります。
日本人社員を指導することもあるでしょう。
そのとき、
「母国では普通の指導方法だった」
では済まない場合があります。
日本で働く以上、日本の職場でどのような行為が問題になるのかを知っておく必要があります。
これは外国人社員を縛るためではなく、本人が知らないうちに加害者になってしまうことを防ぐためにも必要な説明です。
セクハラは文化によって「距離感」が違うことも
さらに難しいのが、セクシュアルハラスメントです。
人との身体的な距離。
挨拶の仕方。
冗談。
スキンシップ。
こうしたものは、国や文化によって感覚がかなり異なることがあります。
厚生労働省の資料でも、本人は親しくなろうとして行った行為でも、セクシュアルハラスメントになる場合があると注意しています。
たとえば本人は「お疲れ様」という気持ちで肩を叩いただけでも、相手にとっては不快な行為となる可能性があるという例が示されています。
つまり、
「悪気がなかった」
だけでは判断できません。
外国人社員にも日本人社員にも、
「自分にとって普通の距離感が、相手にとっても普通とは限らない」
ということを知ってもらう必要があります。
性的な冗談も「冗談だから」では済みません
厚生労働省の資料では、セクシュアルハラスメントの具体例として、
身体に触れること、
抱きつくこと、
性的な内容の冗談を言うこと、
性的な行動について話したり、うわさを流したりすること、
裸などの画像を見せること、
などを挙げています。
職場の雰囲気を和ませるつもりだった。
仲良くなりたかった。
自分の国ではよくある冗談だった。
そうした事情があったとしても、相手がどう受け止めるかという視点が必要です。
「嫌ならNOと言えばいい」ではありません
これも、とても重要な指摘です。
ハラスメントを受けた人に対して、
「嫌だったら、その場で言えばよかったのに」
と思うことがあります。
しかし、実際には簡単ではありません。
厚生労働省の資料では、セクシュアルハラスメントを受けても本人に直接「NO」と言える人ばかりではなく、目上の人の意向を尊重する文化もあると指摘しています。
外国人社員の場合、
上司に逆らってはいけない。
会社に迷惑をかけてはいけない。
仕事を失うかもしれない。
日本語でうまく説明できない。
など、さまざまな理由から言い出せないことも考えられます。
だから、
「嫌だったら言ってください」
だけでは十分ではありません。
「誰に相談すればいいか」を具体的に伝える
厚生労働省資料が繰り返し強調しているのが、相談先です。
「困ったら会社に相談してください」
だけではなく、
誰に、どのように相談すればよいのかを具体的に伝えておくこと
が重要だとしています。
外国人社員向けの説明例では、
「○○課の○○さんに相談してもいいです」
というところまで具体化し、さらに、
相談しても評価は下がらないので安心してください
と伝える例まで示されています。
これはとても良い方法だと思います。
「相談窓口があります」
ではなく、
「この人に相談してください」
まで伝える。
外国人社員だけでなく、日本人社員にとっても相談しやすい仕組みになるでしょう。
妊娠・出産・育児についての言葉にも注意
以前の記事で、外国人社員にも育児休業などの制度があることを取り上げました。
制度があっても、
「また休むの?」
「あなたが休んだせいで仕事が増えた」
などと言われれば、安心して利用することはできません。
厚生労働省資料では、妊娠を理由に地位や給与を下げると言うこと、妊娠した社員を辞めさせるために仕事内容を変えること、無理な仕事を命じること、長く休んだ社員に「あなたのせいで仕事が増えた」などと嫌な気持ちになることを言うことなどを、いわゆるマタニティハラスメントとなり得る例として挙げています。
ここでも、外国人と日本人で違いはありません。
「文化の違い」で終わらせない
外国人社員とのトラブルが起きると、
「文化が違うから仕方がない」
という言葉を使いたくなることがあります。
確かに文化の違いはあります。
厚生労働省資料も、文化の違いによってアドバイスのつもりでも相手を不快にさせる場合があるとしています。
しかし、
文化の違いを知ることと、何でも文化の違いで済ませることは別です。
職場には守るべきルールがあります。
だからこそ、
日本人社員には、
「外国人だからこれくらい言ってもいい」
と思わせない。
外国人社員には、
「自分の国では普通だから大丈夫」
と思わせない。
双方に同じように、
この職場では何をしてはいけないのか
を具体的に伝えることが大切です。
外国人にも日本人にも「安心して相談できる会社」を
外国人雇用について考えると、
在留資格。
雇用契約。
給与。
社会保険。
人事異動。
さまざまな制度に目が向きます。
しかし、どれだけ制度が整っていても、
「困ったと言えない」
「嫌だと言えない」
「相談したら評価が下がるかもしれない」
という職場では、安心して長く働くことはできません。
そしてこれは外国人社員だけの問題ではありません。
外国人社員にも分かるように、
何がハラスメントなのか。
何をしてはいけないのか。
困ったときには誰に相談するのか。
相談しても不利益を受けないこと。
を具体的に説明する。
そうして作られた職場は、結果として日本人社員にとっても働きやすい職場になるはずです。
外国人社員に分かりやすい職場づくりは、日本人社員にも分かりやすい職場づくり。
この資料を読み進めていくと、結局そこに戻ってくるように思います。
参考資料
厚生労働省
「外国人社員と働く職場の労務管理に使える ポイント・例文集
~日本人社員、外国人社員ともに働きやすい職場をつくるために~」

コメント